継続賃料の『価格時点』決定も、もめることが有る

賃料増額請求/賃料減額請求においては、『直近合意時点』が重要な意味を持ち、訴訟(裁判)の中でこれが争われる事が多いという事は、以下の記事で解説させていただいたところです。

⇒ 継続賃料の『直近合意時点』決定は、実は難しい

これとは多少のレベル差が有りますが、実は『価格時点』についても、訴訟(裁判)の中で争われる場合が有ります。

今回は、この点についてまとめてみたいと思います。

継続賃料の価格時点とは?

『価格時点』というのは、不動産鑑定評価上の概念で、「不動産の価格の判定の基準日」のことで、賃料の評価にあたっても(ちょっと気持ち悪いですが)『価格時点』という言葉をそのまま使います。

継続賃料の価格時点の決め方

賃料増額請求/賃料減額請求は、一方当事者が他方当事者に文書で賃料の増額/賃料の減額を申し入れることでスタートするのが一般的です。

この場合について、平成26年の鑑定評価基準の改正に伴い、『不動産鑑定評価基準に関する実務指針』に注記が行われていますので、これをかみ砕いて補足する形でまとめてみます。

大原則:平成30年○月分より増額(減額)の『平成30年○月1日』

賃料増額請求/賃料減額請求では、「平成30年○月分より△△円に増額いたします」等と記して申し入れをすることが一般的ですので、ここに記された『平成30年○月1日』が継続賃料の価格時点になるのが大原則です。

もちろん、当初契約が昭和63年6月3日からで、今までも6月3日に合わせて改訂を行っており、今回も「平成30年6月3日から~」という形の申し入れがあった場合は、『平成30年6月3日』が価格時点になります。

例外1:いつから増額(減額)か書いていない場合は『到達日の翌日』

増額/減額の申し入れ文書に「○月分より増額」等の記載がない場合には、『当該申し入れ文書が相手方に到達した日』に意思表示が行われたものと解される結果、『文書到達日の翌日』が価格時点となります。

ちなみに賃料の増額/減額改定の申し入れに、『内容証明郵便』が使われることが多いのは、もちろん内容文書が郵便局で保管されるという点の他、一般書留扱いになるので到達時点が明確になるという点も有ります。

例外2:いつからか増額(減額)か書かれているが、到達前の場合『到達日の翌日』

増額/減額の申し入れ文書に「○月分より増額」等の記載があるものの、これが到達時点よりも前の場合には、過去に遡及する意思表示は認められないことから、意思表示の到達した日の翌日、つまりは『文書到達日の翌日』が継続賃料の価格時点になります。

継続賃料の価格時点に争いの生じる場合

以上のような判断基準は定立されたわけですが、訴訟(裁判)等の中では、未だにこの価格時点で争われる場合が存在します。

このような例を挙げますと、以下の通りです。

賃料増額請求権/賃料減額請求権の意思表示に疑義が生じる場合

賃料増減請求権の行使に当たっては、対象不動産、現行契約及び相手方を特定して賃料改定の意思表示(額の明示は必要ないが、少なくとも増額か減額かは明示する必要あり)をする必要が有るのですが、この一部に疑義が生じる場合が有ります。

例えば東京高裁の判決で、テナントが契約書の賃料等改定条項に基づき「賃料改定協議の申入」を行った上で双方協議を行い、協議不調で訴訟に至った事件で、「『賃料改定協議の申入』だけでは家賃減額請求権の行使に当たらないので賃料減額請求に対して理由がない」と判示しています。

上記の例は、「減額請求自体が無かった」と判断されたドラスティックな例ですが、紳士的に改定交渉をお願いし、賃料増額/賃料減額の落としどころを探って…と協議を進める中で、改定交渉の段階で賃料増額/賃料減額の意思表示時点がどこになるのかで両当事者の認識に差異が生じる可能性が有ります。

何度も賃料増減額交渉を繰り返している場合

昨今、特に都心部の地価上昇の著しいエリアでは、オーナー様が毎年のように家賃増額交渉を行い、これが不調に終わっているという例も有ります。

このような場合には、

  • 3年前からの増額交渉が続いていると認識するオーナー(そう解釈すると3年前から遡って増額後賃料がもらえる)
  • 今までのは不調に終わったのだから、今回新たに増額交渉が行われたと思うテナント(そう解釈すると、賃料が増額されるのは将来に向かってのみ)

の間で価格時点に関する争いが生じる可能性が有ります。

この記事のまとめ

この記事では、文書送達を前提とした「価格時点の決め方」を解説させていただくとともに、訴訟(裁判)等で価格時点に争いが生じる例を紹介させていただきました。

後半の『価格時点が争われる場合』については、最終的には、訴訟(裁判)の中で当事者が主張・立証を行ったうえで、裁判官が決定していくことになりますが、その結果次第でご自身の思ったような結論にたどり着けなくなる可能性も有ります。

こういった事態を避けるためには、

  • まず、原則論を知り、上記のような現状があることを認識すること
  • 賃料増額/賃料減額請求を行う際には、法律的にも賃料増額請求権/賃料減額請求権の行使に当たるように内容を精査し、後日、調停・訴訟(裁判)に発展することも念頭に置いて、内容証明郵便で文書で送付を行うこと
  • 複数回交渉を行っている場合等、新しい交渉であるのか継続交渉であるのかを、自分の中で明確に整理し、これに対応した対応を行うこと

が必要になります。

これに当たっては、当該分野に明るい弁護士・不動産鑑定士の助言を仰ぐことが一番の近道になります。

もちろん、賃料改定.comでもこのようなご相談を受け付けておりますので、以下の連絡先まで、お気軽にご相談ください。

文責:碓井敬三

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