賃料増減額請求権は、実は異常で例外的な規定

我々は何気なく、「賃料増減額交渉を行う権利というのは、当然に保障されている」ような発想を持っていると思います。

確かに、借地借家法には、『賃料増減額請求権』に関する規定がりますが、実はこれ、マクロ的に見ると結構な異常事態なのです。

この辺り、賃料増減額請求をする中でも、しっかりと理解しておく必要がある事項ですので、今回はこの部分を解説させていただきます。

世界的に見て『借地借家法』は異常

まず、欧米的な視点から見ると、借地人・借家人に優位で、賃料増減額請求権が存する『借地借家法』が存し、かつ短期契約で更新が原則となっている日本の不動産賃貸慣行は「非常に不安定」に見えていて、これが「参入障壁」と感じられるようです。

実際、TPPに係る議論の中でも、「取引価格等の開示」とともに、こっそりと「借地借家法の撤廃」が挙げられていました…怖いですね(笑)。

では、一般的・標準的な姿は?

実際に世界的な賃貸契約のスタンダードが有るのかは調べきれなかったんですが、少なくともアメリカでは長期の定期借家契約(確かにこれで、賃料増減額請求権がなければ、キャッシュフローが読みやすいです)が標準的とのことでした。

また、日本においても、民法上の大前提は『私的自治の原則・契約自由の原則』ですので、「公序良俗に反するような契約でなければ、不利な契約(相場より安い・相場より高い等)だったとしても、結んだ自分が悪いので、その契約は守りなさい」ということになります。

この中で、借地借家法の定めている賃料増減額請求権は、「私的自治の原則・契約自由の原則」の例外規定的なものであって、特殊事情(直近合意時点以降の経済事象の変動等)が有る場合にのみ限定的に発生するものというのが法の建付けです。

民民交渉と訴訟

以上を前提にしても、民民の交渉では、取りあえずなんでも言ってみることは可能で、その主張に理屈が無くても相手方が合意してくれればOKです。

ですので、賃料増減額請求権が発生していない状況での、「単なるお願い」(世の中の景気は良くなっていて、周りの賃料も上がっているけど、うちは儲かってないので賃料を下げてくれ等)も、お願いしてみて相手がOKしてくれれば、それが通ります。

しかし訴訟になると、権利が無いものは主張できませんので、まずは権利が存在することを主張しなければ先に進めません。逆にいうと、単なるお願いは通りません。

両者の主張を擦り合わせて解決を図る調停では、建付けの上では「お願い」が通る余地はありますが、合意を促す調停委員は弁護士・不動産鑑定士等なので、調停委員会としての意見は、必然的に訴訟に近いものとなります。

この記事のまとめ

何気に「いつでも発生している」・「簡単に主張できる」と思いがちな『賃料増減額請求権』ですが、上記の通り、『立ち位置』としてはかなり例外的なものです。

そして、裁判等では、これが有ることを認めてもらえないと先に進みませんので、これが認められるための要件の充足を主張し立証していくことが必要になります。

ですので、賃料増減額請求を行う前に、賃料増減額請求が発生していることを明確に主張できるかの検討を、しっかりと行っておくことは、必須条件と言えるでしょう。

文責:碓井敬三

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