ちょっと特殊な賃料増減額請求の流れと、各段階で必要な資料

賃料増減額請求の手続きは、若干特殊な点が有りますので、今回はこれを解説させていただきます。

まずは民民交渉

賃料増減額請求は、オーナー・テナント間での交渉から始まります。

具体には、増額したいオーナー様からの「増額通知の送付」もしくは、減額したいテナント様からの「減額通知の送付」がスタートになります。

後々の事を考えますと、『内容証明郵便』によることが確実ですが、現実には一般の郵便等でなされることも多いです。

※内容証明が良い理由は、こちらの記事をご参照ください。
 ⇒継続賃料の価格時点決定も、もめることが有る

この段階では詳細な資料は不要ですが、受け取った側からすると、なぜ増額/減額が必要なのかの理由なしでは検討を行い得ませんし、感情的にも納得できません。

ですので、増減額が必要な理由についての、最低限度の資料は同封すべきでしょう。

通知を貰った方は、これを検討し、これに応じるか否かの返答をすることになります。

勿論、満額回答の必要はなく、
・いくらまでならOKする
・いつからならOKする
等の条件を設定して再交渉することも可能です。

この結果、両者の合意が形成されれば、『賃料改定の覚書』を作成して、賃料改定が成立します。

現実には、このレベルで合意形成が行われることが大半で、以降の手続きに流れるのがむしろ少数です。

民民交渉の終わらせ方には要注意!

民民交渉の結果、明確に話し合いがつかなければ、「従前の契約が継続している」という理解になりますので、直近合意時点は現行賃料が定まった時点になります。

これに対して、「今回は賃料を改定しないで据え置きとする」という合意が形成された場合、当該合意時点が直近合意時点となります。

後者になると、「ここでいったん合意した」訳ですから、少なくとも2年~3年は増額/減額交渉は難しくなりますし、次回の増額/減額要求幅にも影響が出てきます。

また、クライアント様とお話しする中で、「少額でもよいので一度上げて(下げて)おけば、今後の交渉がしやすくなる」いうことで、「ほんの少しでも動かしたい…」とおっしゃる方も結構いらっしゃいます。

しかしこれも先ほどと同様に、一度合意が形成されると、この合意に拘束されて少なくとも2年~3年は増額/減額交渉が難しくなりますし、次回の増額/減額要求幅にも影響が出てきます。

この点はしっかり意識しておいてください。

裁判の前に調停を経ることが必須

不動産の賃料をめぐる争いに関しては、いきなり裁判を起こすのではなく、調停を行ったうえで裁判に移行しなければならないという「調停前置主義」が採用されています。

ですので、民民交渉がまとまらず、更に争いたければ、まずは調停を起こしていくことになります。

調停や訴訟は、代理人(弁護士)を立てずに自分で手続きを行うことも可能ですが(これを本人訴訟といいます)、私見ながら本人訴訟は調停委員・裁判官に対する心証形成で不利になるようです。

調停・訴訟共に、話の順序や進め方が違うだけで大きく印象が変わりますので、やはりその道のプロである弁護士を立てて行うことをお勧めします。

賃料改定.comでは、継続賃料分野に強い弁護士とのコネクションもございますので、心当たりのない方は遠慮なくご相談ください。

調停は、双方の主張を調停委員が聞きながら、円満な落としどころを探っていく場ですが、民民交渉とは異なり法律的な視点(=賃料増減額請求権の発生の有無)が強くなりますし、自分の主張を認めてもらうには一定の資料等の提出も不可避です。

少なくとも公租公課の推移(借主でも利害関係者ですので、市区町村に契約書等を持って行けば取得できます)・現行賃料の不当性を示す資料の提出はすべきでしょう。

尚、継続賃料についての鑑定評価書をこの段階で出すことは、証拠力の点では優位ではあるのですが、「訴訟は当事者の主張の間で結論が定まる」という特性が有る中で、賃料の上限値・下限値が『継続賃料としての鑑定評価額』(新規賃料に比べ上げ/下げ幅がマイルドになります)に拘束されるという、構造上のデメリットが有ります。

また、この後の訴訟の項で示すように、最終的には第三者鑑定(裁判所専任の鑑定士による鑑定評価書)を元に結果が決まっていく傾向がありますので、個人的には、調停初期の段階では『新規賃料の意見書』等の提出に留めることをお勧めしています。

但し、相手方が継続賃料の鑑定評価書を出してきた場合には、意見書では証拠力において劣りますし、後の第三者鑑定において自分の主張をくみ取らせる努力が必要ですので、鑑定評価書を提出しておく方が無難です。

最後に裁判(訴訟)

調停で不調に終わり、それでも争いを継続したい場合には、いよいよ裁判(訴訟)という事になります。

訴訟になると、裁判官が落とし所を見つける意味で、第三者鑑定の取得を促される場合が多いです(多くは費用は折半になります)。

そして、この第3者鑑定に対して異議を訴えることは、制度上は可能ですが現実的には難しいので、第3者鑑定を書く鑑定士が自分の主張している内容をしっかりくみ取ってもらえるよう、事前に主張・立証をしておくことが重要になります。

主張・立証すべき内容は、賃料増減額請求権の成立理由で有り、直近合意時点以降の事情変更と、特殊事情です。

公租公課・地価推移等については鑑定士であれば斟酌できるわけですが、

  • 契約内容が適正に履行されていなかったこと
  • 恩恵的な契約関係が、相続・売買等で解消されたこと
  • 契約時に特殊事情があったこと
  • 賃貸人・賃借人の近隣地域の発展に対する寄与度

等は、これらに関わるものでありながら、主張がなければ判断の基礎事情に挙がってきませんので、特に留意が必要です。

これらが出そろった段階で、裁判所は和解を促し、それでも無理な場合は判決という流れになります。

この記事のまとめ

この記事では、少し特殊な賃料増減額請求の流れと、各段階で必要な資料等について解説を加えました。

前記事にも有るように、民民交渉の段階と、調停・訴訟の段階で、着目される点も変わってきますので、増減額請求を行う前に、弁護士・鑑定士を交えて全体像を把握したうえで、作戦を立案しておくことを、強くお勧めします。

文責:碓井敬三

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