名古屋賃料市場レポート(2020年8月号)

本件レポートの趣旨

新型コロナウイルスの影響が経済各所に及び、賃料交渉においても下落交渉への転換期を把握し難い状況に感じられるかと存じます。

本レポートは、作成時点(2020年8月)における名古屋圏の賃貸市場動向を概観することにより、賃料交渉等の参考にして頂くことを目的としております。

なお、賃料交渉については、新型コロナウイルスが日本で初めて確認された2020年1月からの影響を気にしがちですが、実際の賃料交渉では、2020年1月からの事情変更を見るのではなく、『直近合意時点』からの事情変更を見る必要が有ります。

さらに、実際の賃料交渉では当該物件の立地性等も重要であり、個々の契約締結経緯にも配慮する必要が有ります。

ですので、本レポートをマクロ的な指針として捉えつつ、個々の賃料交渉の際には、我々賃料改定.COMのメンバーにご相談いただければと存じます。

賃貸市場(事業系)の動き

日本銀行が毎月公表している「企業向けサービス価格指数(不動産賃貸/2015年基準)」のうち、事務所賃貸(全体)、事務所賃貸(名古屋圏)、店舗賃貸(全体)、ホテル賃貸(全体)に係る賃料の動向について、2015年以降の各年1月(2020年は1月と4月以降を表記しております)の指数をまとめたものが以下のグラフとなります。

事務所賃貸については、全体については、2015年以降は上昇を示し、名古屋圏は、4月に下落となったものの、5月からは再度微増基調となっております。

また、店舗やホテルについては、4月に大きく下落に転じ、5月も引き続き下落となりましたが、直近の6月ではホテルは引き続き下落となった一方、店舗賃料は一転上昇となりました。

オフィス新規賃料及び空室率の推移

前グラフでは、名古屋圏の賃料指数は回復を示しておりましたが、本項では、オフィス市場について具体的に見ていきたいと思います。

三鬼商事株式会社のオフィスデータを基に、2019年7月~2020年7月の名古屋ビジネス地区・名駅地区・伏見地区の賃料及び空室率をまとめたものが以下のグラフです。

直近である2020年7月の空室率は、グラフ上の全てのエリアで前月より上昇し、名駅地区においては、2018年6月から約2年ぶりに3%を超えることとなりました。

更に、成約を超える以上の解約予告が出ているとも聞いておりますので、秋冬にかけて空室率の悪化は避けられないものと思われます。

また、賃料水準については、上記グラフでは、名古屋ビジネス地区及び名駅地区は上昇しておりますが、これは募集賃料であることから、賃料水準が高いビルで空室が出たために上昇となっている可能性があります。

他方、CBREが公表した「オフィスマーケットビュー 2020年第2四半期」では、グレードA及び名駅地区における想定成約賃料は前期より微減に転じていました。

店舗賃貸市場

店舗賃貸市場については、CBREが公表した「ジャパンリテールマーケットビュー 2020年第2四半期」によると、名古屋(栄)のプライム賃料は、対前期比14.3%減の12万円/坪と大きく下がりました。

なお、2020年第1四半期は、新型コロナウイルス感染拡大を受けて賃料の公表がなかったため、実質的には2019年第4四半期からの推移となります(以下同様)。

また、空室率は前期に続いて0.0%ですが、当該データは、栄エリアにおけるハイストリートについてものであり、背後においては、大型ドラッグストアやその他大型店舗の閉店が複数認められております(前記のオフィス市場には、これら店舗の閉店も加味されていると思われます)。

上記CBREのレポートによれば、募集賃料を下回る申し込み賃料をさらに下げようとする動きがある一方、内定が取り消された再募集の区画に新たな出店ニーズが見られるとのことです。

立地の良さから需要自体はあるものの、新型コロナウイルスの収束が見えず、売上予測が立てづらい状況においては、当面、店舗賃料は減額基調となるものと推測されます。

住居系の賃貸市場

居住用不動産について、日本銀行が公表している「消費者物価指数(家賃(持家の帰属家賃を除く家賃/2015年基準))」のうち、名古屋市の推移を示したものが下表となります。

これによると、過去10年においてほぼ下落基調にて推移していることが分かります。

但し、2017年以降は持ち直しの動きも見られる中にあって、直近である本年6月は再度下落となっております。

今後においては、新型コロナウイルス感染拡大の影響による景気悪化が可処分所得の減少を引き起こし、ひいては家賃の低下圧力となっていくことが懸念されます。

また、「LIFULLHOME’S見える賃貸経営」によると、本レポート作成日(8月14日)に閲覧したところ、愛知県全域及び名古屋市都心部の空室率は下表の通りでした。

名古屋市16区のうち、20%を超過したのは、中村区と中区のほか、瑞穂区(20.0%)の3区のみであり、特に都心の上記2区については、新規供給が盛んであるため、競争力に劣る物件については空室率が高止まりしているものと思われます。

次号以降は、同サイトから見た空室率の動きも見ていきたいと思います。

帰結

上記アセットについては、全般的に下落基調に至っているということが見て取れます。

また、8月14日の日経新聞一面に、「商業地 固定資産税上げず」という記事が出ました。

2020年1月1日公表の地価公示において、商業地公示地価が全国では平均8%上昇しているため、かかる2020年の地価をベースとした場合、増税となる懸念があるため、記事によれば、2021年度の税制改正において、商業地については2017年の公示地価で算出する措置等を議論するということのようです。

したがって、賃料が下落期にある中において、さらにこの新聞記事の通りとなった場合、直近合意時点が2017年以降ですと、減額要請に対して「コロナ禍においても税金が上がっているから賃料は下げられません」、という単純な拒絶は難しいことになりますので、賃料改定交渉に臨む際は、十分な対策を立てておくことが肝要です。

 

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